一戸建の売り出し価格を決めるのもなかなか大変な作業です。高すぎて売れ残るんじゃないか、安すぎて損してしまうのではないかと、あれこれ思い悩んでしまいます。仲介業者と相談しながら妥当な価格を導き出し、売買を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。
ここでは「売り出し価格の決め方」、「値下げスケジュールの決め方」として、それらポイントをご紹介したいと思います。
一戸建の売り出し価格の決め方
(1)査定額の算出方法を知る
売り出し価格は仲介業者が出した査定額を基準にして、売主が「売りたい価格」と比較検討しながら決めます。
それにはまず、査定額がどのように算出されるか知る必要があります。
実際は査定額を出した仲介業者から算出根拠を説明される際に、具体的に確認していけば良いのですが、概念をあらかじめ知っておいた方が質問もしやすいですし、理解も深まるでしょう。
査定額の算出方法
居住用物件の場合は主に「取引事例比較法」と「原価法(積算法)」が使われます。
取引事例比較法は、対象物件と類似した過去の取引事例を参考にして、価格を決める手法です。原価法(積算法)とは、その家を建てるのにかかるコストを積み上げて、それを価格のベース(再調達原価)とするものです。
新築物件の価格を決める際に使われる手法ですが、中古物件の場合はベースとなった価格から経年劣化による減価補正を行います。どちらか一方の手法を使うのではなく、「取引事例比較法」と「原価法(積算法)」の結果と市場動向などほかの要素を取り混ぜて査定額を導き出します。
(2)考慮すべき検討要素を知る
売り出し価格を決めるに当たり考慮すべき要素がいくつかあります。
売却までの期間
住宅ローンの支払いが厳しくなったから、買い替えで二重ローンを避けたいからなどの理由から、売却期限が決まっておりなるべく早く売りたい場合と、期限は特に設けず納得できる取引ができるまで待つ場合では、価格設定が変わってきます。
期間に余裕があるのであれば、最初は「売れればラッキー」というぐらいの値段から初めて、購入希望者が見つからなければ徐々に値段を下げていくという方法をとります。
売却期限が決まっているのならそんな悠長なことも言っていられないので、なるべく損をしないラインを見定めなければなりません。
最低価格
最低でもいくらでは売りたいという価格は案外出しやすいものです。
住まいを売って住宅ローンの返済に充てたいという場合は特にそうでしょう。ローンの残債と売却にかかる諸費用を計算して最低ラインを決めていきます。
持ち出しが必要になった場合、対応できるか否かというのも検討要素になります。
価格交渉に応じるのか?
買主からの値引きや指値という価格交渉に応じるかというのも重要な要素です。せっかく物件に興味を持ってくれているのですから、価格交渉にはなるべく応じた方が良いです。価格交渉に応じたことで、売主に有利な契約条件を提示できることもあります。
この場合は、あらかじめ値引き枠を設定して売り出し価格をつけます。
(3)3つの価格を決める
不動産の販売価格はそう簡単に決められるものではありません。
それにそもそも正解のあるものでもありませんので、先に挙げたような要素を踏まえ、仲介業者と相談しながら、最終的には売主が納得した価格で売り出すことになります。すぐに買主が見つかれば言うことはありませんが、そうスムーズには行かないものです。
計画的に値段を下げていくことを想定して、売出し前に次の3つの価格を決めます。
売りたい価格 | 売主がこれで売れればある程度満足と思う価格 |
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売れる価格 | 「売れそうな価格」である査定額から何割か下げた価格 |
最低価格 | これより低価では絶対無理という価格 |
一戸建て値下げスケジュールの決め方
売り出し価格が決まったら、いよいよ一戸建ての売り出しです。
仲介業者が立てる販売戦略では宣伝広告の仕方が重要な項目ですが、値下げ時期をあらかじめスケジューリングしておくことも重要です。
値下げスケジュールは当然、売却期限によって変わってきます
期限を設けず納得できる取引ができるまで待つ場合であっても、目標の時期を定めずに商売をするというのは現実的ではありません。長くてもまずは6ヶ月以内を目標にしてスケジュールを立てていきましょう。
たとえば、目標を6ヶ月以内とした場合、はじめから2.5ヶ月後に1回目の値下げ、その2ヶ月後に2回目の値下げといった具合のスケジュールになります。
売り出しを開始してからすぐに問い合わせがないからといって焦る必要はありません。
むしろ、1ヶ月以内に連絡が何件も入るようであれば、よっぽど先に目をつけていた人がいる人気物件だということです。中古市場の場合、物件の情報が市場に浸透するまでに1ヶ月はかかります。
値下げの情報についても同様です。値下げしたのに問い合わせが入らないからといって、短い期間で再度値下げをする必要はありません。かえって訳あり物件なのかと嫌煙されるか、足元をみられるかといった事態を招くだけです。
このような焦りからくる失敗を防ぐためにも、あらかじめ値下げスケジュールを立てておくことは大切なことなのです。
値下げから次の値下げまでは少なくとも1ヶ月は間を空けるようにしましょう。
最後に|一戸建ての売り出し価格は相談して決めよう
素人が住居を売却する場合は、仲介業者のアドバイスにしたがって、相談しながら対応していくのがベストでしょう。
専任媒介契約であれば業者からの定期的な報告義務がありますし、一般媒介契約であっても積極的に売り出しをかけるつもりであれば報告もせず放っておくようなことはありません。しかし、専任媒介契約は、売り出してしばらくの間は、「囲い込み(*)」がおこなわれていないかチェックしておいた方が無難です。
別の業者に対象物件の問い合わせをかけてみて、そのような状況でもないのに「商談中」というような答えが返ってき場合は、残念ながら囲い込みの可能性があります。
(*)「囲い込み」とは買主を自社で見つけて報酬を2倍するため、物件情報を他社に公開しないことです。
更新日:2019年04月25日