条件が似たようなマンションが高値で売れているから「今が売却時期だ!」と思っていませんか?
同じ条件でマンションが売れていたとしても、その売却益になるとは限りません。売った額にはさまざまな税金が発生するため、実際は少なくなります。
しかし、ここでマンションを売却せずにいるのもおすすめしません。売るのを止める前に税金の軽減処置など確認しておきましょう。
今回は、手元に残る売却益を増やす節税や特例について、詳しくお伝えします。
目次
マンションの売却益は「売れた額」ではない!
よく「マンションの売却額=手元に残る額」とイメージする人がいます。
でも実際は、不動産会社への仲介手数料や利益が得た部分に税金など課税されるため、手元に残るお金は少ないのです。
マンション売却前にチェック!売却益に必要な税金が諸費用
マンションを売ると、次のような税金や諸費用が発生します。
仲介手数料 | 不動産会社への手数料 |
---|---|
印紙代 | 売買契約書に貼る収入印紙 |
司法書士代 | 抵当権抹消登記などの手続費 |
住宅ローン返済代 | 住宅ローンの残債分 |
所得税・住民税 | 売却費(所得)に課税 |
それぞれの項目を詳しく確認していきましょう。
不動産会社への仲介手数料
仲介手数料は法律により上限が定められており、基本的に上限額ギリギリで不動産会社は計算しています。
売却額 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 取引額×5% |
200万円~400万円以下 | 取引額×4%+2万円 |
400万円以上 | 取引額×3%+6万円 |
一般的にマンションを売るとき、不動産会社を通じて取引をおこないます。買主と売主の仲介役として、さまざまな取引手続きをおこなってくれます。
不動産会社を通じずにマンションを売却する場合は、仲介手数料の発生はありません。
マンション売買契約書の収入印紙代
マンションの売却額によって、契約書に貼る印紙代が変わります。
契約金額 | 収入印紙代 | 軽減税率 |
---|---|---|
500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
1,000万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
5億円以下のもの | 10万円 | 5万円 |
現在、国税庁では平成32年3月31日までに作成する不動産売買契約書には、軽減税率の税額で設置しています。
通常の印紙税額より半額になるため、期間内はマンションの売却益が増える計算になるのです。
抵当権抹消代と司法書士代
多くの人はマンションを住宅ローンにより購入していると思います。住宅ローンを返済中は、借り入れしている銀行が抵当権を設定しています。
マンションを売るときは「抵当権抹消登記」という手続きが必要で、司法書士にお願いする必要があります。手続きをするために、2つの費用が発生します。
登録免許税 | 1戸・千円 |
---|---|
司法書士代 | 1万円~ |
登録免許税は一戸につき千円と決まっていますが、司法書士への報酬は事務所によって対応が違います。平均すると1万円ですが、場合によって2~3万円支払うこともあるので、事前に確認しておくようにしましょう。
住宅ローン返済代
住宅ローンが残った状態でマンションを売却する場合、残債務の返済をしなくてはいけません。
マンションを売る前に完済させるのではなく、通常は売却したお金で住宅ローンの残り分を支払います。完済することで抵当権が解除され売却がスムーズにできます。
ただ、マンションの売れた額が残債務より少なかった場合、自身が現金で支払わなくてはいけません。手持ちがない場合、抵当権が解除できず売却手続きができない場合もあるので気をつけましょう。
所得税と住民税
所得税はマンションを購入したときの額より売却した額が高かったときに発生します。
たとえば2千万円で購入した物件が3千万で売れた場合、1千万円が課税対象になります。
また、住民税も所得税と同じで、利益があった場合に課税されます。ただし、所得税も住民税も特別控除があるため、多くの人は課税0円です。こちらについては、後ほど詳しく紹介します。
マンションの売却益に課税されるといくら手元に残る?
実際にマンションを売却して、仲介手数料や税金が課税されると、手元にはいくら残るのか心配ですよね。
売却益が出る人ほど課税対象になり、手元に残る費用は少ないといわれています。どれくらい現金が残るのか、シミュレーションしてみました。
実際に計算してみよう!マンションの売却益はこうなる
どれくらい売却益があるのか、三菱UFJ不動産販売サイトの試算シミュレーションを使って見ました。
たとえば、次のような条件でマンションを売却した手取り金額を確認してみましょう。
- 売却価格:4千万円
- 取得費:5%自動計算
- 諸経費:2万円
- 所有期間:居住用5年超10年以内
売却価格 | 4千万円 |
---|---|
仲介手数料 | 136万円 |
諸費用 | 2万円 |
印紙代 | 1万円 |
譲渡税 | 93万9千円 |
手取り額 | 3,727万1千円 |
諸費用の2万円は、登録免許税と司法書士への報酬代です。マンションなので取り壊し費用などの諸経費は0円で計算しています。
譲渡税(所得税・住民税)の内訳は、次の通りです。
(譲渡益-特別控除)×税率(所得税+住民税)=譲渡税
(3,661-3,000)× 14.21%(10.21%+4%)=93.9万円
譲渡税は状況によって0円になるケースもあるため、もう少し手元に残る金額が増える可能性があります。
住居期間が浅いマンションを売ると手取り額が減る!
上記の条件で「居住用5年以内」でマンションを売却すると、どれくらい手元に残るのか計算してみました。
- 売却価格:4千万円
- 取得費:5%自動計算
- 諸経費:2万円
- 所有期間:居住用5年以内
売却価格 | 4千万円 |
---|---|
仲介手数料 | 136万円 |
諸費用 | 2万円 |
印紙代 | 1万円 |
譲渡税 | 262万円 |
手取り額 | 3,599万円 |
ほとんど同じ条件でシミュレーションしてみましたが、住居期間5年以内に売るのと10年以内に売るのとでは手元に残る額が「168万1千円」も差があったのです。
後ほど詳しくお伝えしますが、譲渡税(所得税・住民税)は所有期間に応じて軽減税率の特例が関係しているのです。
マンションの売却益を増やすために節税や特例をチェック!
マンションを売るときは、節税や特例などをしっかり確認しましょう。条件に当てはまったマンションだと、売却益が増やせます。
どんな節税や特例があるのか、詳しく確認していきましょう。
取得費を見直す
マンションの売却益を増やすためには、取得費の見直しが大切です。
取得費とは、マンションを購入するときにかかった費用。たとえば、次のような項目が取得費に含まれます。
- 建物の購入代金
- 購入時の税金(登録免許税や印紙税など)
- 仲介手数料
- 設備費
- 借り入れ金利子
- 測量費
建物の取得費は、減価償却費を購入代金などの合計額から差し引いて計算します。
もし、マンションを購入したときの取得費がわからない場合は、譲渡収入の5%で計算します。残り95%を利益として税金計算しますが、状況によって取得費を推計計算する場合もあります。
- パンフレットで購入金額を調べる
- 市街地価格指数を利用する
上記の推計計算は、税務署によってNGとされるケースもあるため、必ず専門の税理士に相談しましょう。
3,000万円の特別控除
先ほど「所得税や住民税は多くの人が課税0円」とお伝えしました。その理由は、3,000万円の特別控除をあるからです。
この特別控除は、譲渡所得が3,000万円以上にならなければ税金は必要ないということです。
一般的に譲渡所得が3,000万円を超える人は少ないことから、ほとんどの人が課税0円なのです。
ただ3,000万円の特別控除には、一定の条件をクリアしなくてはいけません。
- 自分が住んでいるマンション
- 前年/前々年に同じ特例を受けていない
- 前年/前々年に買い替え・繰り越し控除の特例を受けていない
- 収用などの特別控除やほかの特例を受けていない
- 災害で滅失したマンションは住まなくなった日から3年経過する日の都市の12月31日までに売却
- 買主との関係が親子や夫婦など身内ではない
多くの人は、上記条件をクリアできるため、マンションを売却しても所得税や住民税の支払いが免除されています。
所有期間が10年以上で売却価格4千万円のマンションで、譲渡税が約94万円必要です。この金額が0円になるのは、売却益としては大きいですね。
10年超所有軽減税率の特例
3,000万円の特別控除と併用して、保有期間が10年超えのマンションを売るとき、10年超所有軽減税率の特例が受けられます。
10年超所有軽減税率の特例にも条件があるため、クリアしているか確認しておきましょう。
- 売る年の1月1日時点で保有期間が10年を超えている
- 前年/前々年に特例を受けていない
- 買い替え・繰り越し控除などほかの特例を受けていない
- 住まなくなった日から3年目(12月31日)以内に売却
- 買主が親子や夫婦など知り合いではないこと
上記条件に問題なければ、所得税と住民税は以下の税率で課税されます。
譲渡所得額 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
6,000万円以下 | 10% | 4% |
6,000万円以上 | 15% | 5% |
買い換え特例
現在所有しているマンションを売却し、新しく家を買い替えるときに特例が使えます。
この買い替え特例は、買い替えした家が売却するマンションより費用が高いときに適用されます。所得税と住民税の課税を将来に繰り越しできます。
買い替え特例も条件をクリアしなければ適用されません。
- 売却する年の1月1日時点で10年を超えて住んでいる
- 売却価格が1億円以下
- 新居の土地面積は500平米以下、床面積が50平米以上
- 新居が築25年以内、新耐震基準をクリア
- マンション売却の前年~翌年に新居購入
この特例を受けられた場合は、買い替えで利益が出た部分に譲渡所得が課税されます。計算が少しややこしいのですが、下記にまとめます。
- マンション売却額-新居の購入額=収入金額
- 収入金額-買い替えに発生した経費=対象額
こちらの買い替え特例は、上記で紹介した2つの特例と併用できません。条件をクリアしても非課税にはならないため、多くの方は課税が免除される3,000万円の特別控除を利用しています。
住宅ローン支払い中で適用される所得控除
住宅ローンが残った状態で、マンションを売りに出す人が多いです。売却額で住宅ローンの残債務をするのが一般的ですが、中には高く売れず支払いが困難になってしまうケースもあるでしょう。
このようなときに適用されるのが所得控除です。
住宅ローンの残り額が売却費で完済できない場合、一般所得に「購入価格-売却価格」を含められます。しかも、売却した年から3年間適用されるため、税金の負担額は大幅ダウンできます。
ただし、こちらの所得控除も一定の条件をクリアしなくてはいけません。
- 売却する年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている
- 控除を受ける年の所得合計額が3千万円以下
マンション売却で赤字が出てしまっても、翌年から3年間は繰り越しで所得控除ができます。この期間中にマンションの買い替えをおこなう場合は、確定申告を忘れないようにしましょう。
注意!住宅ローン控除と3000万円特別控除は一緒に使えない!
よくマンションの売却益を増やす方法として、3,000万円の特別控除で課税免除をおこない、買い替えた新しい家を住宅ローン控除をしようと考える人がいます。
この2つの特別控除は併用できないので気をつけましょう。
それぞれの特別控除は一緒に利用できませんが、譲渡所得が少ないときは「住宅ローン控除の方がお得」になる可能性があります。
- 3000万円特別控除は1回限り
- 住宅ローン控除は10年間
住宅ローン控除は借り入れから10年間、限度額40万円で年末のローン残高の1%が控除対象になります。10年間の控除額が、所得税や住民税より上になればお得になる計算です。
どちらの控除を使うか、しっかり考えてみるのをおすすめします。
住宅ローン控除はマンション住み替えでも受けられる!
住宅ローン控除は借り入れしてから10年間受けられますが、条件次第によって住み替えしてもまた控除が適用されます。
ただし、住宅ローン控除が適用できる場合、課税所得が発生する年から適用です。
たとえば、マンションを売却して新たに家を購入して住み替えた場合。新居の購入価格より売却価格が低いと譲渡損失が発生します。
このとき「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が適用されるため、譲渡損失が大きいと課税所得が0円になり住宅ローン控除が受けられません。
住宅ローン控除が受けられない期間(損失の繰り越し控除中)から10年を引いた年数が、住宅ローン控除の適用期間になるのです。
確定申告を忘れずに!マンションの売却益も対象になる
マンションを売却したら、必ず確定申告をしましょう!
会社や営業先からいただく収入とは別で、マンションの売却益も申告する必要があります。新築を購入したとき、住宅ローン控除のために確定申告した人が多いと思います。
売却した費用は譲渡所得と見なされるため、申告漏れは脱税になる可能性があるので注意しましょう。
また、マンションの売却益については、登記情報によって税務署はしっかり把握しています。申告忘れをすると後日、税務署から譲渡所得の申告について連絡が来ます。
また売却益がなくても、確定申告はおこなっておきましょう。一定の条件をクリアしていると、給与や事業所得と損失を合わせることができます。損益通算することで、税金がお得になる場合がありますよ。
不動産の選びが重要!マンションの売却益が変わる!
マンションを高く売ることも重要ですが、不動産業者の中でも「諸費用が安いところ」を選ぶとマンションの売却益は増やせます。
マンションの売却益は、マンションが売れた額から諸費用が差し引かれた分。この額から、さらに額に応じて税金も発生するため「思っていたより売却益が少ない」と感じてしまうケースがあるでしょう。
少しでも多く売却益を増やすためには、高く売っていかに諸費用を安く抑えるのかが大きなポイントです。
少しでも売却益を増やすためにも、マンションを売るときはいくつかの不動産会社へ査定してみましょう。
査定額で高いところと低いところが出てきます。実際に不動産に話しを聞いてみると「仲介手数料は半額や0円」というケースもあります。
こういった諸費用を抑えることで、手元に残るお金が大きくなりますよ。
まとめ|マンションの売却益を増やすなら査定すること
売却益を増やすためには、マンションがどれくらいで売れるか把握しておくことが大切です。不動産会社によって査定額は異なるため、いくつか業者へ依頼してみましょう。
更新日:2020年12月01日